中距離恋愛

中距離恋愛開始

「夏帆、ごめん」

3月上旬の土曜日。
久しぶりに休みが合った休日。
恋人である篠田剛（ｼﾉﾀﾞ ﾂﾖｼ）と待ち合わせたカフェ。
会って最初の剛の言葉がそれである。

えっ…
なに？
もしかして別れ話？

イヤな予感が胸をかすめる。

そういえば…、
前の彼氏と別れたときも、会ってすぐに『ごめん』と謝られたっけ…
そんなことも思い出してしまう。

でも、剛から次に出てきた言葉は別れ話ではなかった。
それは良かったけど、
でも、その内容は、私にとってツライものには違いなくて…

「俺、転勤が決まった。
場所は××市。
ここからだと新幹線で1時間半。車だと、高速を使って2時間半かな。
4月からは遠距離…、いや、これくらいの距離、今は中距離って言うらしいな…」
「………」

私と剛の、中距離恋愛が決まった瞬間である。