中距離恋愛
「開けていい?」
と聞くと、
「あぁ、つけてみろよ」
と言われ、袋を開けてピアスをつけてみた。
「どうかな?」
と聞くと、
「うん。似合ってんじゃないか」
と素っ気ない返事。
「車出すからな」
そして前を見て運転に集中する。
照れているときの剛だ。
「ありがとう」
そう小さく呟いた。
聞こえないくらい小さな声で言ったつもりだったが、
「あぁ」と返事をしてくれたところを見ると、しっかり聞こえたらしい。
そのまま宿まで、まっすぐ戻った。

「お帰りなさいませ、篠田さま」
宿に着くと、女将さんや仲居さんたちに迎えられた。
「御夕食は何時からに致しますか?」
女将さんに聞かれた。
「6時でいいか?夜、ゆっくり飲みたいんだ」
「うん、いいよ」
「6時からですね、畏まりました。
今日もお部屋でのお食事でよろしいでしょうか?」
「はい。
それでお願いします」

私たちは部屋の鍵を受け取り、夕食の時間までのんびり過ごした。

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