中距離恋愛
「ありがとう、左紀ちゃん。
お言葉通り、今夜は夏帆をお借りします。
……ちゃんと、しっかり甘えてもらう予定なのでご心配なく」
剛は植田さんにそう答え、それを聞いた夏帆は、赤くなる顔を隠すように俯いていた。

それからすぐ、席を立った。
剛が会計をしているあいだ、3人で店の外で待っていた。

「夏帆、ちょっといいか?」
俺は夏帆を呼んだ。
そして彼女に言った。
「…良かったよ、幸せそうで。剛に大事にされてて」
「……うん」
「それとあいつ、今、俺に嫉妬してるだろうから大変だぞ、今夜…」
「………えっ?」
「…愛されすぎて、寝かせてもらえないかも知れないぞ」
「!?……そんなこと」
また顔が赤くなる夏帆。
やっぱり面白い!

すると、
「お待たせ!……って大地!
夏帆となに話してる?」

会計を終わした剛がやって来て、俺から夏帆を奪うように抱き寄せながら言う。

「んー。お前がヤキモチ焼くようなこと。
あんなことやこんなこと…、夏帆に教えたの俺だって確認」
剛を挑発するように答えてやる。
実際、そんなこと言ってないけど。

やっぱり嫉妬している剛は、
「ちょっ、剛、ちがっ」
「夏帆、行くぞ!」
夏帆の手を引いて歩き出した。
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