中距離恋愛
「もしもし…」
『夏帆か?』
電話の向こうから聞こえるのは、聞き覚えのある声。
「…大地さん?」
自信なく聞くと、
『あぁ。夏帆の連絡先が変わってなくて良かったよ』
「…あっ、うん…」

思わず身構えた話し方になってしまう。
そんな私に気づいた大地さんは、私を安心させるように優しく話す。

『急にごめんな。
昨日、伝え忘れたことがあって…』
「…伝え忘れたこと?」
『そう。
剛のことで…』
その言葉に緊張が走る。

「なに…?」
声が震えたかも知れない。

『夏帆はさ…。剛との最初の出会いって、いつだか分かるの?』
「剛との、最初の出会い?」
『うん、そう…』
「…中学のとき。バスケの中体連、だよね?』
『そっか…。
夏帆も覚えてるんだ』
「……………」
『剛も、そのときの夏帆を知っているよ。
…俺は覚えてなかったけど』
「えっ…?」
『剛の初恋なんだと、夏帆は…。』
「……………」
『何か言葉を交わしただろう?
そのときから気になったらしい』
「……………」
『3年後に、俺の彼女として会ったときは驚いたってさ…』



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