中距離恋愛
「それでは、髪型の方からセットさせていただきます」
私はイスに座らされると、髪をブラッシングされる。
すぐに宮本さんは、
「お母様と妹さんが到着されたみたいなので、私はそちらの着付けに行って参ります」
そう言って出て行った。

それからドレスに着替えて、写真を撮るためにスタジオに入った。
中にはタキシードに着替えた彼がいて、その姿に思わず見惚れてしまう。
彼も私を見つめて、
「夏帆、キレイだよ」
と言ってくれる。

そんな私たちを見た菊池さんが苦笑いしながら、
「すみません。
式の時間が迫っておりますので、急いでいただけますでしょうか?」
申し訳なさそうに言う。

何枚かポーズを変えながら写真を撮って、すぐに教会へ向かう。
中には参列者が揃っている。
時間になり、私は父にエスコートされて1歩1歩進む。
バージンロードの真ん中では、彼が待っている。
彼の前まで来ると、父は私の腕をそっと離した。そして、私の掌を、彼の掌に重ねる。

「剛くん。
夏帆のこと、よろしく頼んだよ」
父の言葉と共に、バトンが渡された。



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