秘め恋*story3~パート先で…~
帰り道。
大丈夫だという私に対して、心配だからと半ば強制的に彼に送ってもらうことに。
バスを降りて、二人並んで歩いた。
「ホントに大丈夫なのに。」
「いえ、今日みたいなことあったんですから…心配です。」
優しい子だなぁ。ホントにしっかりしてる。
うちの大地と同じような年なんて信じられないわよ。
そう。彼は高校生。
息子と同じ年頃の男の子。
私はちょっと若いお母さんくらいの年齢なんだから。
だから、
ドキドキなんかしちゃだめ。
キュンキュンとかしちゃだめ。
「なつみさん、今日綺麗な三日月ですよ。」
1人考え事をしながら歩いていると、隣の黒木くんが不意に私にそう言った。
見上げると、本当に今夜は綺麗な三日月だった。
「本当、綺麗。」
私がそう彼に笑いかけると、彼はピタッと立ち止まってしまった。
「黒木くん?」
俯く彼の顔を覗き込もうとすると、
「…ですか。」
「ん?何?」
ボソッと呟いた彼に聞き返すと、今度は私の顔をまっすぐと見据えた眼差しで…
「そんな顔されたら、
俺…抱き締めたくなるじゃないですか。」
え?
びっくりして言葉が出てこない。
というか、今のは聞き間違いとか…
「なつみさん…綺麗すぎます。」
え?
やっぱりきっと聞き間違…
「なつみさん…好きです。」
「ええ!?」
聞き間違いじゃない…ってことだよね。
く、黒木くんが私を好き?
え、どういうこと?夢とか?
「なつみさん、聞こえてます?」
月明かりと外灯の柔らかい明るさでも分かる…
彼の赤くなった顔。
言葉が出てこないから、とりあえず必死に頷く私。
な、何て言ったらいいの?どうしよ。
「く、黒木くん。」
「はい。」
「えっと、黒木くんは高校生だよね?」
「はい。」
「うん。そんでもって私は君と同じ年頃の息子を持つ…その~、おばちゃんだよね?」
「そんなの関係ないです。」
くぅ~…真面目な子。。
私が返答に困ってると、彼は真剣な表情で…
「高校生じゃ、好きになれませんか?」
正直、分からない。
好きになれないのか、どうなのか。
だって、長い間恋愛なんてしてなかったんだから。
女ってことも意識しなくなってたし…