秘め恋*story3~パート先で…~
「こ、ここでいいよ!家もうすぐだから。」
いい年してこの逃げ方はどうなのよ。
そう思ったけど、真剣で素直な彼にどう返していいかわからなかった。
私はお礼を言って小走りで家まで帰った。
別れ際に見た彼の複雑そうな笑みが頭から離れないでいた。
「ど、どうしたらいいの?」
玄関にしゃがみこみ、1人呟いた。
息子のでかいスニーカーを見ながら思う。
私…女なんだ。
黒木くんに好きって言われて…ドキドキした。
胸が熱くなった。
「いや、でも、ねぇ…」
息子と変わらない年頃の男の子だよ?
無理でしょ。ダメでしょ。
そう感じながら、彼の真剣な眼差しを思い出すと…やっぱりドキドキする。
「あ、お帰り。てか、腹ペコ~。」
お腹を出してポンポンする息子。
「ただいま。今作るから、あんたも手伝い。」
「うぇーい。」
恋なんかしてる場合じゃない。
私は母親なんだから、この子を立派に育てなきゃいけないんだから。
夕御飯の支度をしながら、さっきまでの出来事は夢なんだと思うことに専念した。