秘め恋*story3~パート先で…~
あれから1週間。
黒木くんは仕事で顔を合わせても、今まで通りに接してくれた。
まるであの日のことはなかったかように。
そんな大人な彼にちょっと寂しくも感じたけど、これでいい。
だって、あれは夢だったんだ。
これでいい…いいの。
「なつみさん?」
「あ、え、何?」
「あの、俺、明日でバイト最後なんで…」
「え!?明日?」
品出しの作業をしながら、黒木くんが突然切り出した。
「なんで?」
もしかして…私のせい?
「明日で夏休み、終わりなんです。」
「あ、そっか。」
ホッ…。
って、安心してる場合か!
なんか…このままで良いのかな。
私、彼の気持ちから逃げたのに。
「そっかぁ。 せっかくいい働き手だったのに寂しくなるなぁ。」
「あの、なつみさん。1つ、わがまま聞いてもらって良いですか?」
「え?何?」
横を見ると、彼が私の反応を伺うように見つめていた。
そんな彼の様子が可愛く見えた。
「明日、仕事終わったら…
少し時間もらえますか?」
「え、いいけど…」
私の言葉を聞いて、パッと嬉しそうな笑顔に変わった彼は…
「一緒にアイス食べに行きましょう!」
アイス?
あのアイス屋さん?
聞くと、彼はこの前の私が食べていたフレーバーのアイスが食べたいから、付き合ってほしいと…。
アイスのことなら断る理由もないし、明日は大地も友達と夜まで遊ぶって言ってたしね。
「うん。アイス、食べにいこっか。」
「やった。約束ですよ!」
無邪気に喜ぶ彼を見て、ふわっとした温かい気持ちになる。
逆に胸がチクリと痛む気もした。
はっきりしない私…最悪。