秘め恋*story3~パート先で…~
次の日、仕事の後、約束通り彼とアイスを食べに行った。
この前とは逆のフレーバーをお互い注文して食べた。
甘いものが好きな彼を見て、こんな姿を見るのも今日が最後かぁ…なんて思いながらいた。
そんなアイス屋さんからの帰り道。
この前と同じように彼は私の家まで送ってくれた。
残念ながら、今夜の月は三日月より丸かった。
「俺、あのスーパーでバイトして良かったです。皆さん、優しくていい人ばっかりで。」
「ふふ。また冬休みにバイトしに来なよ。
店長もいつでも歓迎だって言ってたし。」
そう。店長は黒木くんを本当に絶賛して、高校卒業したらぜひ就職してほしいなんて…
「なつみさんは…どうですか?」
「え?」
「俺がいなくなったら、
寂しいって思いますか?」
急に真剣な眼差しでそう聞かれて、思わず何も言えなくなったけど“そうだね、寂しくなる。”と返すと、彼は苦笑いで顔を背けた。
どうしよう…気まずい。
歩きながら、しばらくお互い何も喋らず、沈黙が続いた。
「…ここでいいよ。」
「あ、はい…。」
家の近くで私は立ち止まり、彼にそう伝えた。
外灯の灯りが頼りなくて、背の高い彼が俯いていると、どんな表情をしているのか分からない。
「明日から学校頑張ってね。今までお疲れさま。今日もありがとね。じゃあ、お休み。」
もう何も言わない方がいい。きっと。
私は最後に彼に笑いかけると、そのまま背を向けて家の方向へと歩き出した。
でも…
ーーーーーーーギュッ。。
え…立ち止まって、背中に感じる温かさと抱き締められている腕の力強さに戸惑う。
「黒木…くん?」
後ろから急に抱き締められた私は、かろうじて彼を呼ぶ。
「すみません、最後にこうさせて下さい。」
耳元で聞こえた声は少し震えてて…
「私こそ…ごめんね。
気持ち、嬉しかったよ。ありがとね。」
そう言った私の声も心なしか震えていた。
「なつみさん…」
「ん?」
「好きです…ずっと。」
もう胸がいっぱい。
ありがとう。
私はそっと彼から離れると、顔も見ずに足早にその場を離れた。
もうこれでお別れ。
こんなおばちゃんを好きになってくれて、ありがとう。
ドキドキをありがとう。