キミが、すき。
「先輩が怖くない部活がいいな」
亜季が苦笑いをしていった。
まあ…そうやな。
先輩が怖いのって嫌やわ。
「でも、亜季って先輩に目付けられることせぇへんやろ?」
「怖いし。華恋もせぇへんやろ?」
「……どうやろぉ」
「何それ」
小さくクスクス笑われる。
自分でも、返し方が変やった事は解ってた。
「ほんまに」
そう言って自分でも笑う。
気付けば校舎が見えてくる。
ほんまに中学生になったんやな。なんて、当たり前の事を考えて、亜季と他愛の無い話をしながら、残りの道を進んだ。
学校に着いて、昨日から張り付けられたままのクラス表を何気なく見る。
亜季とはクラスが離れちゃったけど、同じ小学校卒の子もおる。
心配な事はない…事もないか。
友達の名前を覚えれるかが心配や。
どうでもいいか。
亜季と上履きに履き替えて、一緒に一年の階まで登って、教室の前で分かれる。
「あっ華恋!」
「おはよー」
「おはよー」
席が近い友達と挨拶を交わして、すぐに気付く。
知らない子がおる……!
…当たり前か。
鞄を机に置いて、顔をあげる。
「華恋、桜ちゃんと美沙ちゃんと話しててんけどな」
「ん?うん」
「あ、ごめん。えっと…こっちが桜ちゃんでこっちが美沙ちゃん」
……可愛い子やなぁ。
ああ、女の子は皆可愛いか。
「で、これが藤山華恋」
「由果!“これ”言うな!」
「あははっごめーん、怒らんといて」
ケラケラと笑いながら、由果は手を合わせる。
寒いのにポニーテール。……尊敬するわ。
「それで何話してたん?」
「うん、あのな」
由果はにこにこと笑いながら話を始める。
「凄いカッコいいの男子がこのクラスなんやって!」
「……カッコいい??」
「そっ!どうや!」
「何がや」
そのドヤ顔はなんやねん。
やったったで!みたいな顔。腹立つ。
「えぇ~、華恋やったら反応すると思ったんやけど」
「何それ。あたし男好きちゃうよ?」
「まあ、そうやな。美都子<ミトコ>みたいに男好きちゃうな」
「……美都子?」
「阪口!」
由果はニヨニヨと怪しげな笑顔で言う。
……阪口美都子…。
「ああっ!あれ!!」
“あれ”呼ばわりしちゃったよ。
「そうそう!」
由果が頷く。
“あれ”で通じるとは……。
「なあ、華恋ちゃん!一緒に職員室ついて来てぇ」
「ん?ええよぉ、何??」
蘭ちゃんから声をかけて貰えるとは。
同じ小学校やけど全然違うグループにおった美少女が笑顔を振りまく。
由果たちに「ちょっと行ってくる」と告げて、教卓前におる蘭ちゃんの元へ少し駆け足で向かった。