キミが、すき。



「ごめんな、華恋ちゃん。話の途中やったんちゃう?」

「んーん。気にせんといて。それで何しに行くん?」

「うん。ちょっと担任に言わなあかんのあるんやけど、1人やったら不安やから」


典型的な女の子。
どうして女の子ってこんなに可愛いんだろう。
……別にレズではないよ、あたし。


「でも、なんであたしなん?いつも一緒におった友達は?」

「クラス離れてん」

「あー……。じゃあ、お昼とか一緒に食べよか?」

「いいん??」

「うん!」

「やったぁ!ありがとぉ」


満面の笑みの蘭ちゃんに、自然とあたしも笑みをこぼす。
階段を降りて角を曲がれば職員室。

蘭ちゃんと仲良くなれたからか、気分がよくなって、あたしは一段飛ばしで階段を降りる。


「ちょっ?!危ないで!華恋ちゃん!」

「え?行けるってぇ」


踊り場で後ろ歩きをする。
それがいけなかったようだ。



「危ないっ!」


蘭ちゃんの慌てた声とほぼ同時に、身体が傾いた。
あれ……??

身体がガクッと落ちる感覚。咄嗟に目を瞑る。

あれや、落ちる夢見た時と同じ感覚。


でも、身体が誰かに支えられてる……??



「何しとるん、お前」

「……え…あ、ごめん」


焦って身体を起こして、180度回転する。
調度階段を上って来てた男子に支えられたようだ。

……一年…同級やんな??


「あの…ありが――「どんくさ」


……はあ…?

ソイツは大きな欠伸をしながらあたしの横を通り過ぎていく。
蘭ちゃんは慌ててあたしに駆け寄ってきた。


「いける!?」

「…………うん……」

「……?華恋ちゃん??」

「今の誰…?感じ悪。」

「え…?」

「『どんくさ』って何!?ありがとうって言おうと思ったのに!」

「あ、…えーっと、でも見たこと無い人やったね」


どんくさ!?
どんくさやと?!


「あたしは“ドジ”なんよ!そうやろ!?」

「……えっと…」

「ああ、ちがう。“間抜け”!」

「間抜けて……じ、自分で言うか??」

「いいねん、馬鹿にしても!でもさ、初対面やで!?」



腹立つ…。
なんなん、そりゃ余所見してたあたしが悪いのは解ってるけど。

お礼ぐらい普通に言わせてくれたってええやん!?

何やねん!
初対面に向かって『どんくさ』?



あり得へんわ……。




「まあ、そうやな……。びっくりしたな……。」



…………。



「い、いけるか?華恋ちゃん」

「………いける。行こか、蘭ちゃん」

「う、うん」




腹立つわ…なんやねん。アイツ……!!

あたしが一番嫌いなタイプ……。何様やねんって!
初対面に向かって毒吐かんでもええやん……!



< 5 / 7 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop