キミが、すき。


―――――――――――――――……



「あ、華恋、蘭ちゃん、お帰りぃ」


さっきと同じ場所で固まっていた由果たち。
あたしは蘭ちゃんと一緒にそこに戻った。


「ただいまぁ」

「ただいま」


皆にそう返すと、由果はすぐさまあたしの腕を掴む。


「ほらっ、あれ!!」

「ん??」


由果が指を差したのは男子の塊。


「………何?」

「え?だからっ、あれ!!」


どれ!?
あたしは男子一人一人の顔を見る。

そして、ある一人の顔で驚いた。

あいつ…さっき階段でいた……。



「蘭ちゃんッ!」


名を呼ばれた蘭ちゃんは一瞬ビクついたが、あたしが何か言いたいのか悟ったのか、苦笑いを返してくれた。


「ほら、あの真ん中におるの!さっき話しとったイケメン!」

「うえぇ!?」


驚きで出た声は案外大きかったようで、教室が静まり返ってしまった。
咄嗟に口を押える。


「アンタ、『うえぇ』はないわ」

「や…ごめん」


普通に恥ずかしい。


「華恋ちゃんって面白いな」

「ほんまに」


美沙ちゃんと桜ちゃんに馬鹿にされた!?
褒められたと思っておこう。

皆笑っとるから良いケド、こっちはめっちゃ恥ずかしいやぞ。
絶対解ってくれてないわ。

ふと男子たちの方を見る。


「!!」


な、なんでコッチ見とるねん!!
目があってもうたやん!

勢いよく下を向いたせいで、由果が首を傾げる。


「どうしたん、華恋。変なもん食べた?」

「由果の中のあたしって一体何なん?」



どっと笑いが生れる。
気付けば注目は薄れていた。

あれ…なんか……なんか、あたし、アイツの事、変に意識しとる…?
…いや、無い。絶対ないから!


「……?華恋ちゃん?」


皆が笑っている中、蘭ちゃんが声をかけてくれる。



「ん?」

「どうしたん?さっきからそわそわしてるけど」

「え!?や、なんでもないよぉ?!」


あれ、なんか変な標準語みたいになった。
蘭ちゃんは不思議そうに首を傾げた。





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