機械人形は、ひとり、語る。(短編)
私たちは、「人間」をこの世界に残してゆくことができなかった。「機械人形」の暴走をくい止めることが、できなかった。彼らを作ったのは私たちなのに…逆に喰われるはめになるなんて、馬鹿な話だ。だけど私は、お前を愛してる。愛してる。愛してる。心の底から…お前もそうだろう?どうして、過去に生きた「人間」達はその素晴らしさを知っていたはずなのに、捨ててしまったのだろうな?まあ、いいさ。今更、嘆いたところで、何も始まらない。なあ、お前、皮肉なことだが…「機械人形」を作ろうじゃないか。女の子の「機械人形」を「エリー」と名付けて。遺伝子レベルからシュミレートした情報が、まだ残っているだろう?私たちが死ぬまで、可愛がってやろう。それから、本を集めよう。人類の遺産だ。誰にも見つからない場所へ隠して…。いつか遠い未来の、この世界に、新しい知性をもった生物が誕生し、成長し、過去を知りたいと願った時。もし…私たちの残したデータから、何か学び取るものがあるとしたら…私とお前が共に生きてきた意味も、きっとあるさ。