機械人形は、ひとり、語る。(短編)
お母様は、お父様の提案に、そっと頷き…こう返したの。

私は、私と貴方が共に生きてきた意味なんて、求めていない。私は、貴方と共に生きることができて、とても幸せだったから。ただ、それだけで充分。でも…そうね。本を集めるなんて、とても素敵なアイディアだと思うわ。単なる記録メディアよりは、長く保存できるもの。本当はすべて、石にでも刻み付けたいくらいだけど…それには、二人の時間が少なすぎる。そうよ。「エリー」に守ってもらうの。誰にも見つからない場所に隠した、人類の遺産。ああ、あなた。幸せな未来がみえる。私たちそうして…最後まで、幸せに…生きて、いきましょう…。

お母様は…泣いたそうよ。
お父様が、先にお亡くなりになって、ひとりぼっちになったお母様は、毎日、お父様との思い出を話していたわ。
狂人となってしまったけれど…。

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