CHECKMATE


洗面化粧台の前でホッと胸を撫で下ろす水島。
どうやってこの場へ辿り着こうか、必死に模索していたのである。

千葉と剣持と共に何度もシュミレーションしてみたが、やはり女相手だと雰囲気が全然違う事に、正直心臓が悲鳴を上げていた。

“警察官”という立場上、例え任務であっても人の心を弄ぶような言動に心を痛めない訳がない。

しかも、水島は見た目とは違い、生真面目すぎる性格の持ち主なのである。

安堵の溜息を零したのもつかの間。
水島は素早く服を脱ぎ捨て、浴室に足を踏み入れた。

その頃、寝室のベッドサイドでは……。
水島から手渡されたジャケットを手にして、美穂が右往左往していた。

本来ならば、ここですぐさま木内に電話を掛け、カモから大金をくすねるのが仕事だが、何故か美穂は躊躇していた。

数分考え込んだ美穂だが、人質に取られている姉を思い、ずっしりと重い水島のジャケットに手を這わせた。

内ポケットから明らかに分厚い高級長財布を取り出すと、躊躇う事無くそれを開いた。

中には予め200万円ほど忍ばせてある為、札用ポケットは存在感が半端ない。
そして、ズラリと並んでいるカードは勿論、ゴールドとプラチナ。
それを目にした美穂は、大きく溜息を吐いた。

そして、札束から2~30万円ほど引き抜いて、自分のバッグに押し入れた。

財布を元に戻した美穂は、ジャケットをハンガーに掛けようとクローゼットへ向かい数歩進んだ所で―――

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