CHECKMATE


ピリリリリッと無機質な電子音が、突如室内に響き渡った。
その音に驚いた美穂は身体をビクッと震わせ、ジャケットを手にして動揺し始めた。

無機質な電子音は、ジャケットのポケットに入っている携帯の着信音。
水島宛に掛かって来た電話に出る事も出来ず、あたふたしていると。

「悪い、電源を切っておくのを忘れてた」
「え?」

鳴り続ける電話の音を聞きつけた水島が、腰にバスタオルを巻いた姿で現れた。

動揺する美穂に歩み寄り、シャワーで濡れたままの姿でジャケットに手を伸ばし、ポケットから携帯を取り出すと。

「チッ」

あからさまに眉根を寄せて、電話に出る。

「はい」

美穂は、そんな様子を唖然としながら見据えている。

水島は顔だけでなく、身体も見惚れるほどのイイ男である。
ほど良く盛り上がった胸筋に、綺麗にブロッキングされた腹筋。
黒い髪から滴る雫が色気を醸し出す中、初めて見る眼鏡を外した素顔に美穂は見惚れてしまっていた。

通話を終えた水島は美穂に苦笑しながら、前髪を掻き上げた。

「すまない。急な仕事が入ってしまった」
「…………そうですか」
「近いうちに店に行くよ」
「…………お待ちしております」

営業スマイルを振り撒く美穂をよそに、水島は着替えに浴室へと歩き出した。

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