CHECKMATE


「体調はどうだ?」
「…………だいぶ楽になりました」

夏桜の肩を抱きながら美穂の後を追う千葉は、声のトーンを落として夏桜に声を掛ける。
夏桜は心配を掛けまいと必死に微笑んで見せた。

美穂は前回と同じ場所で立ち止まると、少し離れた場所に停車したフルスモークの車の中から大柄の男が姿を現した。
その男こそ、木内である。

千葉と夏桜は2人の横を通り過ぎ、次の路地を曲がり息を潜める。

美穂は鞄の中から札束を取り出し、木内に渡した。
木内は手にした札を数え、踵を返した。
その後を追うように美穂も続く。

すると、木内が乗っていた車の後部座席から絵里と思われる女性が姿を現した。

支え無しでは立位も難しく、膝から崩れるようにその場に座り込んだ。
そんな彼女のもとに駆け寄る美穂。
そんな2人目掛けて木内は唾を吐き捨て、颯爽と姿を消した。

木内を乗せた車が完全に去ったのを確認して、千葉と夏桜は2人のもとに駆け寄った。

「江藤美穂さんと絵里さんですね?私はこういう者です」
「…………ッ?!」

千葉は警察手帳を取り出した。
それを見た2人は驚愕の表情を浮かべた。

< 106 / 305 >

この作品をシェア

pagetop