CHECKMATE
「江藤姉妹の両親は、美穂が中学2年の時に交通事故で亡くなっている。当時、高校1年だった姉の絵里は、高校を中退し町工場で働き始めた。両親が遺してくれた保険金や遺族年金は、2人を引き取った父親の弟に騙し取られ、強制的に児童養護施設に送り込まれたそうだ」
「………なんて酷い……」
夏桜の口から悲痛な想いが溢れ出した。
美穂は犯罪だと認識しながら、苦労して育ててくれた姉を助ける為に手を染めてしまったのである。
「2人を取り巻く環境が今回の事件の引き金になったのかもしれないが、犯罪は犯罪だ。決して、それを覆す事は出来ない。これ以上同じような被害者を増やさない為にも、全力を挙げて捜査してくれ」
千葉の瞳に闘志が籠る。
「照さんと猛は、木内を徹底的にマークしてくれ」
「「はい」」
「水島と三國は、2人から得た情報の裏を取ってくれ」
「「はい」」
「倉賀野は、雑居ビルとクラブの詳しい情報を頼む」
「はい」
一様に任務を確認し、一斉に部屋を後にした。
「あの、…………私は?」
「東は俺と、2人の調書を取る………いいな?」
「…………はい」
本来ならば、自ら地取り捜査(周辺聞き込み)をしたい所だが、夏桜の体調を考えて、敢えて残る事にした千葉。
室内に2人だけになった事で、夏桜も少し気を許したようだ。
徐にシャツの腹部部分をギュッと掴み、苦しそうに顔を歪めた。