CHECKMATE
その後、江藤美穂の身柄は送検され、検察の委託という形で引き続き千葉達が取り調べを始めた。
美穂は罪を全面的に認め、捜査に協力する意向を示した。
姉の絵里は精密検査の結果、夏桜の所見通り『SLE(全身性エリテマトーデス)』と診断された。
早急に専門的な治療を施さなければならないほど、病状は極めて重い。
美穂が懸念していた治療費に関しては、『特定疾患医療費助成制度』に申請するとともに、日常生活に著しい支障をきたす程の身体機能障害が認められるので、『身体障害手帳』の申請もする事で全額免除となるだろう。
取り調べは毎日行われ、より多くの情報を得ようと千葉は必死だ。
取り調べに不慣れな夏桜はチームの覇気を下げる訳にも行かず、自分に課せられた任務を全うしようと、姉が入院している病院へと足繁く通っていた。
それには勿論、千葉も一緒に。
絵里には事件性も踏まえて個室をあてがい、見舞いと称して病室で取り調べのような日々が数日続いた。
そんなある日。
自宅マンションへと帰宅する車内で、夏桜は千葉に気になる点を漏らし始めた。
「絵里さんがホステス勤務時代に、仲のよかったホステス数名とホストクラブに通っていたという話なんですけど……」
「………それが、どうかしたか?」
「ホステスがホストクラブに通う事は、よくある事ですか?」
「そうだな、もてなす側にもストレス発散する場が必要なんだろうな。ホステスがホストにハマるなんて事はよく聞くな」
「………そうですか」
世事に疎い夏桜は、事件を通して少しずつ知らなくてもいい世界を垣間見るようになっていた。