CHECKMATE


信号待ちの車内で、千葉は俯き加減の夏桜の様子を横目で窺う。

「絵里さんの結婚詐欺の相手がホストだったというのが、どうも引っ掛かるんですよね」
「………例えば?」
「結婚をエサに騙そうとするなら、両親がいて、それなりに生活が安定してる人を狙うのが犯罪心理だと思うんです」
「………ん」
「だけど、一緒にホスト通いした友人でなく、両親がいなくて、生活もそれほど裕福で無い絵里さんを狙った意図は何でしょう?」
「…………」
「後ろ盾もない絵里さんを狙うとなると、お金以外に目的があるとしか思えないのですが……」
「そうだな。それは、俺も考えている事だ。既にその線で、水島と三國に調べさせている」
「そうなんですか?」
「……あぁ」

捜査に関して詳しい状況を把握するのは酷だと思い、千葉は夏桜に説明せずに指示を出していた。
だがこうして、夏桜は刑事張りの視野で物事を判断していた。

「内緒にしていて、悪かったな」
「………いえ、捜査に関しては素人ですから」
「だが、東の目は確かだと、改めて実感したよ」
「え?」
「判断力も洞察力も、刑事顔負けだ」
「………そんな事はありませんよ」
「いや、ホントの事だ」

千葉は夏桜に柔らかい笑みを向けた。
2人の間に隔てられていた壁が消えた瞬間であった。

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