CHECKMATE
「すき焼きを作るんですけど、食べますか?」
「………へ?」
「鍋は1人で食べても美味しくないので……」
「…………いいのか?」
「嫌なら、誘ってませんよ」
夏桜は、玄関ドアに視線を固定したまま呟いた。
心なしか、耳が赤くなっているように感じた千葉は……。
「じゃあ、お言葉に甘えてお邪魔するよ。シャワー浴びてからでもいいか?」
「あっ、はい。では、1時間後に……」
「………おぅ」
千葉の返事を耳にした夏桜は軽く会釈し、そそくさと部屋へ入って行った。
突然の食事の誘いに千葉は戸惑いながらも、スーパーでの夏桜の行動を思い出し、自然と頬が綻んでいた。
「………まいったな」
シャワーを浴び終え、自宅リビング内をウロウロ歩き回る千葉。
他意はない。
同僚が夕食をご馳走してくれる……ただそれだけなのに、変に意識してしまっていた。
言葉通りに1人鍋が嫌なのか、それとも、護衛の御礼なのか。
まかり間違っても、食事の心配をしたのではないと、何度も言い聞かせて。
だが、夜遅くに女性宅へ行くという事に、千葉は戸惑いを隠せなかった。
別に邪な考えがある訳ではない。
刑事として、当然なのだが……。
年頃の女性の部屋に、のこのこと出向いてよいものだろうか?
そんな考えが脳内をグルグルと駆け廻っていた。
あれこれ考えた千葉は―――――