CHECKMATE


「東は、ビール飲めるか?」
「あっ、はい」
「体調は?……薬を服用してんじゃないのか?」
「今日は調子がいいので大丈夫です。薬は、どうしても我慢出来ない時にだけ服用してるので、今は飲んでません」
「………そうか。じゃあ、今日はお近づきの印って事で」
「はい」

千葉は自宅の冷蔵庫から缶ビールを持参していた。
ダイニングのテーブルの上には美味しそうな料理が並んでいる。

「もしかして、帰宅してからこれ全部作ったのか?」
「え?……あっ、漬物は市販のものですけど」
「………いや、それでも凄いな。東は料理上手なんだな」
「っ………味はどうだか分りませんよ?」

夏桜は顔を逸らし火照る頬を手で覆うと、

「いや、間違いないだろ」
「へ?」
「今にも腹の虫が鳴りそうなくらい、いい匂いがする」
「っ……」

男性に手料理を振る舞った事の無い夏桜は、千葉の一言一言に素直に反応を示す。
赤みを帯び始めた頬は、更に熱を持ち始めていた。

「さっ、冷めるから食べましょうかっ」
「そうだな」

千葉と夏桜は向かい合うように座り、ビールで乾杯をした。

夏桜は手際よく千葉の分を取り皿に取り分け、千葉はそんな夏桜をじっと眺めていた。

腹八分目に達した千葉は片肘を着いて夏桜を見据え、

「東、聞きたい事があるんだが、聞いてもいいか?」
「ッ?!……………はい、遠慮なくどうぞ」

夏桜は箸を置き、真っ直ぐ見つめ返した。

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