CHECKMATE


「身体の具合が悪いのは、どの辺り?病名とかを聞いてもいいか?」
「…………」

千葉の質問に対し、明らかに顔を曇らせる夏桜。
真っ直ぐ見つめていた視線は緩やかに下降して行き、空になった鍋の中に到達した。

「無理にではないんだが、俺に出来る事があればと思って……。それに、お前の事は俺しか知らないから、何かあった時の為に対処出来る方法を知りたい」
「………そうですね。千葉さんには本当にご迷惑をお掛けするばかりで……」
「いや、それはいいんだが……。これは仕事だし、人命が最優先なのは当たり前だからさ」
「………はい」

千葉は残りのビールをグイッと飲み干し、ゆっくりと視線を夏桜に向けた。
すると、

「臓器に異常がある訳ではありません」
「………と言うと?」
「ホルモン分泌異常と言えば、解りますか?」
「…………何となく」
「日常生活を送る中で、それほど支障はありません」
「………」
「ですが、健康という訳でもありません」
「………ん」
「人間誰しも、ある程度の不調と折り合いを兼ねつつ生活してますよね?」
「……そうだな」
「私の身体も同じです」
「だが、警視監の話だと、それが原因で帰国したと聞いてるんだが」
「………そうですね。一時はかなり重症でしたが、今は落ち着いています」
「大丈夫なのか?痛みがあったりするんだろ?時折、顔を歪ませてる時があるから、心配にはなってたんだが」
「………ご心配お掛けしてすみません。でも、高望みしなければ、何ともありませんから」
「高望み?」

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