CHECKMATE


千葉の片眉がピクリと反応すると、

「完治する事の無い病でも、症状を安定させる事は可能だったりします。ですが、それをする事で別の症状が出る事もあるんです。人間の身体はとても繊細で、難しい構造をしているからこそ、無理に抑制する事も促進する事もせずに、様子を見るという事も重要だったりするんです」
「何だか、一朝一夕にはいかない感じなんだな」
「………そうですね」

千葉に、夏桜の言いたい事は通じたようだ。
夏桜はホッと一息吐き、苦笑した。

「何でもいいんだが、俺に出来る事はあるのか?」
「え?」
「例えば、他のメンバーがいる時に辛くなったら、俺にどうして欲しい?」

千葉は一歩も引く様子が無い。
夏桜は、気に留めてくれるくらいでいいと思っていたのだ、千葉は違ったようだ。

「今のままで十分ですが……」
「そういう訳にも……いかないんだよな」
「へ?」
「実はさ、俺が東とペアを組むのは妥当なんだが、仕事以外でも常に行動を共にしてるから、他の奴らが変に勘ぐって……」
「………もしかして、ご迷惑をお掛けしてます?」
「迷惑って程の事じゃないんだが『刑事』という職業柄、どうも真相を知りたくて、あれこれ質問攻めに遭ってるのは確かだな」

千葉はメンバーから詰問された事を思い出し、苦笑した。

< 117 / 305 >

この作品をシェア

pagetop