CHECKMATE
「ホステスに健康診断を定期的に受けさせるだなんて、聞いた事ないな。AVや風俗なら、性病検査を受けるってのは知ってるが……」
「ね?おかしいよね?まるで、時間外勤務を斡旋してるみたいじゃない」
「そうだな。如何にも水を売る商売のホステスが、湯を売る商売の道具にされてるような感じだな」
千葉は夏桜の手元にある本に視線を向けた。
「それで、その医学書と何の関係が?」
「ん?あっ、これ?ちょっと詳しい検査データが知りたくて、昔読んだ本を見返してるんだけど……」
「江藤絵里と関係があるんだな?」
「……うん、多分。詳しい事は、絵里さんが検査を受けたという病院を調べないと何とも言えないけど、彼女が言ってた言葉が引っ掛かるから」
「………そうだな。俺の方の調べ事が片付いたら、早速病院に行ってみよう」
「うん」
千葉は夏桜をリビングに残し、書斎へと向かった。
マンションを出た2人はその足で、絵里が健康診断で何度も訪れた病院へと向かった。
「なぁ、マジでする気か?」
「えぇ、だって他に手立てが無いもの」
「それにしたって……」
千葉が言い淀むのも無理はない。
だってこれから、夏桜は『潜入捜査を行う』と言うのだから。
刑事でも無い彼女を1人で送り込む訳にも行かず、千葉も同行する事にしたのだが……。
「私が医師と会話するから、一輝は隣りで黙って頷いていればいいからね?」
「…………ん。あまり無茶はするなよ?」
「大丈夫よ。それより、ちゃんと演技してよ?」
「………あぁ、分かってるって」