CHECKMATE

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「夏桜、頼むから無茶だけはしないでくれ」
「大丈夫よ。病院は勝手が分るから、怪しい事があれば直ぐに目に付くから」
「それでも、無茶だけはするな。……いいな?」
「うん」

千葉と夏桜は、先日訪れた病院へと向かっている。
前回の初診では、保険証を忘れた事にして診察を受けていた。

そして、倉賀野に手配させた捜査用の保険証を手にして、夏桜は本格的に潜入捜査をしようとしているのである。

千葉と夏桜は夫婦という設定で、とある婦人科を訪れる。
それは、絵里から得た情報を基に夏桜が導き出した考えを裏付ける為であった。

「それより、一輝はいいの?」
「何が?
「仕事とは言え、検査を受ける羽目になるだろうし、その………」

運転席に座る千葉を横目に言い淀む夏桜。
そんな夏桜の頭を千葉はポンと一撫でして。

「気にするな。将来の為に、一度は受けておくもの悪くないだろ」
「でも……」
「それより、夏桜の身体は大丈夫なのか?検査したりして、引っ掛かったりしないのか?」
「たぶん、大丈夫。私の勘が当たってれば、返って好都合だから」
「……………そうなのか?」
「うん」

不安な色を滲ませる千葉に対し、夏桜は至極冷静である。
病院というホームグラウンドだからなのかもしれないが、恐らくそれだけではない。

美人局といい、売春斡旋といい、同じ女性が被害に遭う事に心を痛めていた。
そして、これ以上被害者を増やさない為にも、出来る事をしたかったのである。

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