CHECKMATE
「溺水によって死亡する主な原因は、急速な体温の低下やパニック状態から誘因される心臓発作や意識喪失等により、水中から顔を上げるのが困難になる事です」
夏桜の説明を真剣に聞き入るメンバー。
「通常咽頭部に水が入り込むと、気管が凝縮して肺に水が入り込もうとするのを防ぐのですが、血中の酸素濃度が低下すると、無意識に酸素を取り込もうとパニック状態に陥り、陸上と違い十分な酸素が補えない為、脳が酸素不足になります。意識が朦朧としている状態で水を飲み込めば肺に水が入り込み、酸素欠乏で心停止に至ります」
夏桜はメンバーの顔色を窺いながら、ゆっくりとした口調で話し続ける。
「溺水により死亡した遺体は、死の直前まで呼吸していた事になるので、肺内部には空気と水が存在し、解剖すると、泡立った水が確認出来ます。ですが、発見された遺体を解剖した結果、肺内部からは泡状の水が確認出来ませんでした」
剣持の片眉がピクリと反応した。
「現在詳しい死因を特定してますが、血液から高い数値の薬物反応が出ている所をみると、薬物による心停止が最も有力です」
夏桜が説明を終えると、その場にいたメンバー全員が同じ顔つきになった。
「一輝さんっ!」
「班長ッ!!」
「ん、皆が言いたい事は解ってる。勿論、他殺の線で捜査を進めるつもりだ。先程警視監から、この件の捜査許可を頂いた」
「さすがっ、班長っ!!」
「どこから情報が漏れているのかは解らないが、敵は俺らの動向を読んでいる。それは間違いない。だから、より一層気を引き締めて捜査に当たってくれ」
「「「了解」」」