CHECKMATE
千葉はすぐさま浴室へと戻り、水栓を閉めた。
そして、タオルで髪の水気をサッと拭い、部屋着に着替えて。
脱衣所から出た千葉は、気配を殺して夏桜の姿を探し始めた。
だが、キッチンにもリビングにも寝室にもいない。
もしやと思いトイレへと向かったが、トイレの中ももぬけの殻であった。
眉間に刻まれたしわがより一層深く刻まれ、千葉の眼光が部屋の隅々に突き刺さる。
室内を一通り見回した千葉、ふと脳裏に嫌な予感が走った。
すぐさま玄関へと向かい、夏桜の靴を確認すると。
「無い!」
夏桜が愛用しているサンダルがそこには無かった。
しかも、玄関の鍵が開いている。
千葉はスニーカーを足先に引っ掛け、玄関を飛び出すと。
「ッ?!」
「………あっ……」
千葉が玄関ドアを開けた数メートル先に、夏桜の姿があった。
そこは、千葉が夏桜の為に貸した筈の部屋。
少し前まで夏桜が1人で住んでいた部屋である。
その部屋の玄関ドアの前で、夏桜は黄色い布でドアノブを拭いていた。
「何をしてるんだ?……そこで」
「…………なっ、何でもないですっ」
「っんなわけねぇだろ。その布は?」
「…………っ」
「俺に隠し事か?」
「…………」
「話したくないなら話さなくてもいいけど、身勝手な行動は命取りになる。俺に迷惑を掛けたいなら別だが、事件は1人で解決出来るモノじゃない。俺らは一心同体みたいなもんだろ?………違うか?」