CHECKMATE
夏桜は口籠ったまま千葉をじっと見据え、千葉もまたそんな夏桜をじっと見据えていた。
どれ程の時をそうしていたのか、根負けしたのは夏桜であった。
「私が住んでいたマンションってね、極秘に用意された部屋だったの」
「へ?」
「だから、国から………国家レベルって言うの?そういうの、よく解らないんだけど。とにかく、あの部屋を知っている人間は限られている」
「………って事は……」
「どこからか、情報が漏れた事になるわね」
「っ……」
「それにね?私を尾行して、あの場所を割り出せたとしても、玄関を開けるパスワードは3重に掛けられていたから、内部の人間もしくは、相当のスキルの持ち主って事になるわ」
「マジかよっ」
「何を探していたのかは、大体の察しが付く」
「何なんだ、それは……?」
「今は言えない」
「何故だ」
「貴方を巻き添えには出来ないもの」
「だから、さっきも言っただろ!俺らは一心同体みたいなもんだって」
「それでもっ!私が嫌なのっ!!」
夏桜は声を張り上げ、込み上げる感情を必死に抑えていた。
「じゃあ、あの病院の事を詳しく教えてくれ」
「えっ?」
「俺に隠してる事があるだろ?」
「っ………」
「あの医師に何を仕掛けてんだよ。そろそろ俺に話してくれてもいいだろ」
「……………」
夏桜は千葉に射竦められ、大きな溜息を漏らした。
そんな夏桜の表情をじっと見据え、今夜ばかりは逃さんとばかりに大きく腕を組んだのであった。