CHECKMATE


「それで、…………収穫はあったのか?」

緊迫した空気を打ち破るかのように大きな溜息を吐いた千葉は、ゆっくりと瞼を閉じた。

大学時代からの親友とも言える猛を疑いたくはない。
だが、状況からしてそう思わざるを得ないのであれば、仕方がない。

身内ですら無条件で疑うのが刑事というものである。
千葉は息を潜め、夏桜の言葉を待った。
すると、

「…………今の所、大丈夫のようよ」
「はぁ~、………そうか」

千葉は二度目の大きな溜息を吐いた。
ゆっくりと瞼を押し上げると、心情を悟った夏桜は柔和な表情を浮かべた。

「まだ予断を許さない状況だけど、………私も無いことを祈ってるわ」

チーム『S』に加わって以来、剣持の生真面目さは十分に理解していた。

言葉の端々から女性関係は派手であろう事は察しが付くが、イケメンな上、健全な若者なら皆そうであろう事も理解が出来る。
そんな剣持も、仕事の上では別人なのである。

上司の命令には忠実で、正義感はチーム1と言っても過言じゃない。
だからこそ、夏桜も疑いたくはなかった。

だが、念には念を入れるのが夏桜の性格である。
誰にも頼ることが出来ず生きて来た夏桜にとって、自分の経験と知識、そして勘だけが頼りであった。

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