CHECKMATE


「だけど、自己注射出来る人なんて本当に稀で。だから、みんな大変な思いをしてでも通うのよ。それくらい、妊娠を希望してるって事なんだけど……」
「………あぁ」
「基本的に治療方針は夫婦で話し合って決めるの。薬を服用することも注射を打つかどうかもだし、勿論人工受精や体外授精を行うかどかも。まぁ、何らかのリスクがあって、選択肢がない夫婦もいるでしょうけどね」
「よくテレビや雑誌なんかでも取り上げられてるけど、不妊治療って高額だよな?」
「えぇ。不妊治療の助成制度もあるけど、回数にも上限があるし、年収も関係してくるわ」
「………そうなんだ」
「この製剤がクラブ『AQUA』にあったって事は、明らかに意図的だとしか思えない」
「だろうな」
「仮にも、ホステスが子宮筋腫や子宮内膜症を患っていたとしても、全員が全員同じような症状だとは考えにくいわ」
「ん」
「子宮筋腫なんて、ある程度の年齢になれば、大小あるにしても、大抵の女性が抱える病よ。それに殆どが良性だし、経過観察だけで済むわ
「………
「じゃあ、これを意図的に使用するって事は……?」
「採卵することが目的だとしか思えないわ」
「…………ッ?!」

夏桜の言葉で、混乱する脳内が一瞬でクリアになった千葉。

思わず、ゴクリと唾を飲み込んだ。

「私みたいに体にリスクを伴わなければ、卵子を育てるようなホルモン注射をしなくても済むから、毎日病院に通うこともない。排卵前に採卵出来れば、確実に状態のいい卵子が取り出せるって訳」
「………って事は………」
「恐らく、…………卵子の密売だと思うわ」

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