CHECKMATE



遺体で発見された桑原の検査結果をこれまでのデータに追加している手を止め、キーボードから視線を上げると、四つ折りに畳まれた紙を差し出す夏桜。

「明日の科警研での打ち合わせの際に、これを打ち合わせの部屋に落として来て下さい」
「自分が、………ですか?」

翌日は、これまでの情報とデータの照らし合わせという事で、千葉と三國、そして夏桜が科警研に赴くことになっていた。
夏桜自身も科警研に行くのだから、わざわざ三國に頼まなくてもいい状況なのに………。

「中を見てもいいですか?」
「………どうぞ」

夏桜から受け取った三國。
メモに書かれているものを確認し、眉間にしわを寄せた。

「これって、極秘で遂行するような案件ですか?」
「………いえ、今夜話すつもりです」

夏桜は固い表情のまま、小さく頷いた。

「分かりました。………預かります」
「ありがとうございます。………すみません」
「理由はあえて聞かないでおきますが、班長には明日、確認させて頂きます。……それでもいいですよね?」
「……………はい」

三國はメモ用紙を自分の手帳の内ポケットに差し込んだ。
その様子を見届け、夏桜は自分の席に戻ろうとした、その時。

「東さん、どこか具合でも悪いんですか?
「え?」
「顔色が悪いように見えますが……」
「…………大丈夫です。少し疲れているのかもしれません。ご心配お掛けしてすみません」

三國に心配かけまいと、夏桜は無理に笑顔を作って見せる。
だが、席に戻った夏桜は、パソコンのモニターに隠れるように蹲り、下腹部をぎゅっと鷲掴みした。

痛みで声が漏れ出さないように必死に堪え、細く息を吐きながら痛み逃しをして……。
痛みがやっと遠のいた頃には、額に薄っすらと汗が滲んでいた。

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