CHECKMATE
無かった事には出来ないが忘れる事は出来そうだと思い、夏桜を男を赦す事にした。
早くこの場から立ち去って、関わらないようにすればいいだけの事である。
記憶は時間と共に薄れる……そう考えた夏桜。
散乱した自分の荷物を拾い集める為、男の前から少し離れた。
そんな夏桜の態度に呆気に取られた男であったが、すぐさま夏桜の荷物を拾うのを手伝い始めた。
すると、
「これ………って……」
「えっ?」
先輩から貰ったお取り寄せの品を手にして、男の表情が一変した。
「……………パウダー?」
「え?………見れば分かるでしょ。ジェルに見えます?」
たかがパウダー如きに何故、あんなにも顔色を変えるのか、夏桜は不思議で仕方なかった。
あまりにも嫌悪感を露わにするものだから、夏桜もつい言い返してしまった。
「ッ?!……どうして、これを?」
「は?………どうしてって、今夜使おうと思って貰ったものですけど」
「貰ったって、誰に?」
「えっ?……ちょっと、何なんです?」
「いいから答えて!!」