CHECKMATE


突然、声を荒げた男。
そんな男の態度に驚くも、夏桜は冷静であった。

「職場の先輩に貰いました」
「はっ?………中身が何なのか知ってて受取ったのか?」
「へ?………そりゃあ、知ってますよ。天然オーガニック純度100%のものなんて珍しいから、わざわざ海外から取り寄せて貰ったので」
「はあぁ?!」

みるみるうちに男の眉間にしわが寄る。
整った顔立ちが台無しになる程、顔を歪めたのである。

すると、男は夏桜の目の前にしゃがみ込み、夏桜の瞳をじっと見つめた。

「なっ、何なんです?ちょっ、ちょっと、近いですよ」

色気のある美顔が目の前に現れ、軽く吐息がかかりそうな距離に夏桜の胸はドクンを音を立てた。
つい先ほどの事が思い出される。
フィルム越しだとはいえ、男の肌が頬に触れた感触。
抱き寄せられた男の腕の力強さ。

夏桜にとって、それらは初めての経験であり、胸を高鳴らせるのには十分であった。

「これは、今回が初めてか?」
「へ?」
「前にもあるのかと聞いてるんだ」
「………いえ、無いですけど」
「…………はぁ~」
「ちょっと、一体何なんです?」

夏桜の瞳を見つめていた男は、何やら安堵した様子である。

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