CHECKMATE


「この男は、Daniel Ray Carter(ダニエル・レイ・カーター)29歳。俺らが追っているキュア製薬の社員だ」
「えっ?」
「外人だったんですか?」
「ん、俺も日本人だと思い込んでたんだが、倉賀野がここ数日かかりっきりで画像解析した結果、昨日この男と判明した。俺の方で裏も取ってある。ダニエルは博打好きで有名らしく、多額の借金があることが判明した。それが原因でアメリカ本社を追われ、日本の支社に左遷されたようだ。けれど博打好きは治らず、仙堂の息のかかる店でも借金を作ったことで、今回の件に繋がったという訳だ」

千葉が話し終えると、次は夏桜がホワイトボード前に現れた。

皆の視線が注ぐ中、夏桜は倉賀野が婦人科から入手したファイルの大まかな分類をホワイトボードに書き始めた。

「通常のカルテとは別に保存されていた別ファイルです。クラブ名があるのは皆さんが見ても明らかだと思いますが、残りのファイルを私の方で精査した結果、どうやらこれは、不妊治療に何らかのリスクがあるか、又は短期間で妊娠を望む夫婦のものと思われます」

夏桜は不妊治療に関する通常の流れを記載し、そこにオプションとでも思えるようなイレギュラーな治療方法を書き加えた。

「通常はタイミング療法といって、排卵の周期に合わせ、ごく自然な形で妊娠出来るようにアドバイスする方法が取られます。それでも妊娠出来ない場合、もしくは何らかの原因があって妊娠が難しいと判断した夫婦には、人工受精が勧められます。それでも無理だと判断した場合は、体外授精もしくは顕微授精といった方法が取られるのですが、この別ファイルに記載されているご夫婦たちは、体外授精及び顕微授精を希望している夫婦という枠組みです」

夏桜はメンバーに分かるように、人工受精や体外授精、顕微授精の違いも説明した上で、ファイルに記載のある夫婦の欄を示した。

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