CHECKMATE
7◇警告


7月に入り、アスファルトの照り返しも眩しく、じりじりと肌が焼ける日が続く。

千葉率いるチーム『S』は、少しずつ情報を入手していた。

「本当に行く気か?」
「大丈夫だってばっ」
「ったく、………何かあったらすぐ連絡入れろよ?」
「はいはい、了解」

夏桜はその後も婦人科に通っている。
千葉が駄目だと言っても聞かず、己の勘だけを頼りに。

見張り用のテナントビルの地下駐車場から向かいの病院へと向かう夏桜。
そんな夏桜の後ろ姿を見つめ、千葉は溜息まじりに髪を搔き乱した。

受付に診察券を出した夏桜は、待合室のソファに座る女性の隣に腰を下ろす。

「Hi,how’s it going?」(こんにちは、調子どう?)
「It's OK. How about you?」(まあまあよ、あなたは?)
「I can't complain.」(まずまずといったところよ)

夏桜がフランクに話しかけた女性は、Joan(ジョアン)という名のフィリピン人。
半年前から通っているという。

不妊治療の為、毎日のように病院へ通う女性は比較的多い。
診察で訪れるというより、ホルモン注射を受ける為に通っているのだ。

注射が必要な患者の多くは毎日打ち続けなければならず、身内に医師又は看護師がいるか、自身で打たない限り病院へ足を運ばなければならない。
ホルモン注射は筋肉に打たねばならない為、処置室から出てくる人は皆、上腕か上臀部を摩っている。
しこりにもなりやすく、痛みや痒みを帯びることもある為、ホルモン療法を拒む者も少なくない。

だが、それらを我慢してでも子供を授かりたいと切に願う女性は実際に多い。

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