CHECKMATE
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女の持ち物から目を疑うような品を見つけた千葉。
すぐさまそれを手に取って感触を確かめる。
ビニール越しだが、それはとても粒子の細かい白い粉であった。
10センチほどのファスナー付のポリ袋に収められているそれ。
見るからに怪しい雰囲気が漂っている。
大通りから程近いとはいえ、ここは路地裏と言ってもおかしくない場所に位置している。
しかも、人通りは極端に少ない。
先程のビルから出て来たのだとすると、千葉が4階へ上がっている間にエレベーターで降りた事になる。
入手先を尋ねた千葉に『職場の先輩から貰った』と女は答えた。
合法ハーブがこんなにも手軽にやり取りされている事に苛立ちを隠せない千葉。
挙句の果てには中身が何なのかを知っていて受取ったと言った。
『天然オーガニック純度100%』という言葉にこめかみがピクリと動いた。
千葉は女の前にしゃがみ込み、至近距離から女の目をじっと見据えた。
―――――まだ中毒になっていないような澄んだ瞳をしている。
マスクをしていたから、てっきり薬漬けかと思いきや、女の頬には吹き出物のような発疹が幾つかあった。
手にしている粉が脱法ハーブだとしても、出来れば関与して欲しくない。