CHECKMATE


「本当のことを教えてくれ」
「本当のことって?………私、嘘なんて吐いてないわよ?」

完全に刑事の目つきに変わった千葉が少し怖くて、夏桜は無意識に委縮する。
しかも、刑事相手に車内という小さな密室に閉じ込められている状況で、言い逃れが出来ないような雰囲気が漂う。

「夏桜が世界的に必要とされる人物だというのは分かっている。アメリカの製薬会社で危険を顧みず新薬の開発をしていたことも。だが、……………俺が、知らないことがまだあるだろ」
「っ…………」

凄みのある声音と威圧感のある視線。
普段は温厚で優しい雰囲気の千葉が、刑事の目つきに変わった時。
これぞ、検挙率NO.1だ!とでもいうような、オーラを纏う。

やんわりとかわしたい夏桜だが、言い逃れは出来そうにない。
夏桜はゆっくりと視線を車窓の外へと移した。

「密売組織とは…………全く関係ないけど」
「…………けど?」
「私が追われてる理由は、…………分かってるわ
「ッ?!追われてるって、誰に?………アメリカ政府か?それとも、開発してたっていう製薬会社か?」
「多分、違う」
「違うっ、じゃあ、誰に追われてるんだよ。ってか、何で追われてるんだよ?!」

下唇をぎゅっと噛みしめる夏桜を執拗に問いただす千葉。
車外に声が漏れてしまうほど、声を荒げてしまった。

2人を乗せた車の横を営業マンらしき男性が通り過ぎた為、千葉は我に返る。

「悪い、大声出して。でも、……………隠してることがあるなら、話してくれないと守りようがない」

彼の言うことは正論だ。
でも、この人をこれ以上危険に晒したくない、夏桜はそう思ってしまった。

千葉の手が夏桜の肩にそっと重なる。
夏桜は、溜息まじりに呟いた。

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