CHECKMATE
千葉は辺りを見回し、人気が無いのを確認して。
「そのデータってのは、どこにある」
「…………」
「言いたくないのは分かるが、持ち続けている限り命を狙われるぞ」
「…………ん、分かってる」
「だったら、俺によこせ。誰にも手出し出来ないところに保管するか、それが嫌なら俺がそれを隠滅してやるから」
夏桜の目の前にスッと手を差し出す千葉。
けれど、夏桜はその手をぎゅっと握り、首を振った。
「大丈夫」
「何が、大丈夫なんだよ。そのデータが無くなったって、また監禁されて研究させられるかもしれないってのに、意地張ってる場合か?」
「ホント、………大丈夫だから」
「いいからよこせ。あ、そうか、そうだよな。そんな危険なものを持ち歩てないか。どこにあるんだ?そのデータってのは」
尚も諦めようとしない千葉は、執拗に問いただす。
だが、夏桜も譲らない。
何度も首を横に振る。
「データはそう簡単に見つかったりしないし、ましてや、人手に渡ったりしないわ」
「何で言い切れるんだよ」
「フフッ、私を誰だと思ってるの?東 夏桜よ?」
夏桜はニコッと愛らしい笑みを浮かべ、はぐらかした。
「…………言う気が無いんだな」
「……………ん、ごめんなさい。コレは、私は墓まで持っていかないといけないことだから」
心底心配してくれる千葉に対し本当に申し訳ないと思うが、それでも、口を割るわけにはいかない。
あなたが私を守ろうとするのと同じくらい、私もあなたを守りたいから……。
これ以上、危険な目に遭わせたくないと夏桜は切に思った。
気丈な素振りを見せる夏桜を、千葉はそっと抱き寄せた。
「ったく、手のかかる女だな」
「………ごめんなさい」
「まぁ、それがお前の魅力なんだろうけど」
「っ………」
「言いたくなければ言わなくてもいい。俺が、お前の全てを守り抜けばいいだけのことだ」