CHECKMATE
焦ってつい口走ってしまった夏桜。
けれど、取り消すとこも出来ず……。
「猛、これを見てくれ」
千葉の脇に腰を下ろした剣持は、千葉が開いたスマホの画像をチェックする。
「そんなに広くないんですね」
「そうなんだよ。本牧の倉庫って言ったら、普通コンテナが入る大きさだよな」
「でもまぁ、密売品がここに保管されているとして、大きさも関係してるでしょうから、これくらいの大きさが妥当なのかもしれませんね」
「倉庫の一角に小部屋みたいなところがあって、それがこれだ」
「事務所みたいな感じですね」
「あぁ。だが、ここだけ鍵が掛かってて中を確認出来なかった」
「ってか、一輝さん。この倉庫にはどうやって入ったんすか?」
「横の奥の方に、俺が入れるくらいの窓が開いてたんだよ」
「そうなんすか」
夏桜が2人の会話を無言で見つめていると、
「2人でゲームをしてたのか?」
「あっ、はい。夏桜さんがやってみたいって言うもんで」
夏桜は手にコントローラーを手にしたまま、固まっていた。
「中から楽しそうな声が聴こえて来たから、何やってるのか気になったが……。俺と違い猛は面白くて優しいし、いいんじゃねぇの?」
「………っ」
千葉は先ほどの言葉を気にしているのか、嫌味とも思えることを投げかけてくる。
剣持を恋人にするなら、退屈せずに済むだろう。
気は利く上、優しいし。
けれど、夏桜の胸には千葉の言葉が突き刺さった。
「どうかしたか?」
「ん?……………別に、何ともないけど」
「そうか?」
剣持のマンションを出た2人は千葉のマンションへと向かっているのだが、夏桜はバッグの中に入れっぱなしだったスマホを手にして硬直していた。
ルームミラー越しに違和感を覚えた千葉だが、運転中ということもあり、深く追求しなかった。
震える手でロックを解除すると、未登録の番号から1件のメールを受信していた。
恐る恐るそれを確認すると。
『真希よ、知らない番号で驚かせてごめんね。明日チームのメンバーには内緒で、二人だけで話したいことがあるの。時間を作って貰いたいんだけど……』
夏桜は、胸騒ぎがしてならなかった。