CHECKMATE


病院を出た2人。
ランチをしない時はその場で別れるのだが……。

「ナオサン?……Where are you going?(どこに行くの?)」
「I go to the same direction, too.(私も同じ方向に行くの)」

ジョアンの腕に自分の腕を絡ませ、地下鉄の駅へと歩き出す。

他愛ない会話をしながら地下鉄の入口に到着した夏桜はそこでジョアンと別れ、階段を急ぎ足で降りる。
もしかしたら、千葉や他のメンバーが護衛のため尾行しているかもしれない。

そんな考えが過り、夏桜はドアが閉まりかけた電車に駆け込んだ。

念の為、病院を出る前に千葉にメールを入れておいた。
『ジョアンのお勧めのお店に行って来ます。さほど遠くないし、女性限定のお店らしいので心配しないでね。遅くならずに帰りますから』

場所を特定する情報や詳しい時間などは一切記さず、メールを送信後は電源をオフにするという周到さ。
だが、発信機を仕込ませたバッグと靴を使用している限り、場所の特定なんて容易いはず。

夏桜は後ろめたさを感じながら、足元の発信機付きモチーフを見つめた。

***

夏桜からメールを受け取った千葉。
一人で行動するのは厳禁だとあれほど言っておいたのに。

「倉賀野っ!東の位置を確認してくれ。それと、周辺のカメラも頼む」
「あ、はい、了解」

テナントビルの一室では、焦りを隠せない千葉の声が響いている。

目の前のモニターにGPSの位置情報が表示され、夏桜は婦人科から東に20メートルほど移動していた。
そして、別モニターに周辺の監視カメラの映像が映し出され、夏桜はジョアンと仲良く腕を組んで歩いている。

すぐさま夏桜の携帯に電話を掛けるが繋がらない。
いつも繋がるようにしておけと言っておいたのに……。

千葉はBluetoothのイヤホンを耳に装着し、倉賀野に指示を出す。

「東の位置情報を送ってくれ」
「了解です」

千葉はキャップを被り、部屋を飛び出した。

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