CHECKMATE
「先輩?」
「……お金を全額返済しても、データが存在していることを知っている以上、私は………解放されないと思う」
「っ…」
その通りかもしれない。
あの組織が放っておくはずがない。
大好きで敬愛している先輩をこんな目に遭わせたあの組織が憎くて仕方ない。
元はと言えば、自分が蒔いた種だ。
あんな研究など最初から上手くいかないふりをしていれば良かったんだ。
どこにも行き場のない毎日から脱出したくて。
どんなことでも良かった。
どこでも良かったんだ。
あそこから逃げられるのであれば………。
まさか、大好きな先輩をこんなにも苦しめる事になるなんて、思いもしなかった。
夏桜は静かに腰を上げる。
「時間を下さい」
「夏桜っ!」
夏桜は振り返ることもせず、その場を後にした。
今彼女の顔を見たら、あのままずっと彼女と一緒にいたら……。
きっと、揺らいでしまう。
絶対ダメだって分かっているのに。
夏桜は纏め上げた髪を解いて、バッグの中からキャスケット取り出し、それを目深に被った。
念には念を入れてサングラスを掛ける。
少しでも変装するために……。
エレベーターで1階へと降りた夏桜は、俯き加減でビルの外へと。
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倉賀野からの情報を頼りに千葉は地下鉄に乗り込んだ。
再び地上に出た千葉は再度位置情報を確認する。
「この辺りのはずなんだが……。倉賀野、東は移動してるか?」
『いえ』
倉賀野の言葉に反応するように、千葉は振り返ると。
「あっ」
『いましたか?』
「いや、東の確認は出来ないんだが、目の前に女性専用の美容サロンがある」
『じゃあ、そこかもしれませんね』
千葉は夏桜からのメールを確認する。
すると、そこにはしっかりと『女性限定のお店』とある。
納得した千葉は、20メートルほど離れた場所にある街灯に凭れ待つことにした。