CHECKMATE
「地獄のような生活から逃れるために、自身の命をかけてやっとの思いで日本に逃れて来た彼女を、みすみす組織に渡すわけにはいかない。それが、俺の任務でもあるし、1人の人間として、彼女を守ってあげたいと思うので」
「分かってます」
千葉は真希に釘を刺したかったのだ。
口では何とでも言える。
一度裏切った人間は再び裏切ることも少なくない。
だからこそ『東 夏桜』という人物の為に、理性を失わないで欲しいのだと。
千葉が真希を見据え、溜息を吐いた、その時。
「班長、大変ですっ!」
「どうした?!」
「東さんが病院から出た足で、どこかに向かってるみたいですっ!発信機がかなり移動してまして…」
「何だとッ?!」
夏桜のパンプスとバッグのチャームに仕掛けてあるGPSからの位置情報が確認できるPCに、移動しているのが映し出された。
すぐさま夏桜に電話をかけてみるものの、繋がらない。
「倉賀野、マルツイ(追尾)するから位置情報くれ」
「了解です」
「私は?」
「ここで彼のフォローを」
「了解です」
千葉はすぐさま隠れ部屋を飛び出し、車で追うことにした。
「今、どの辺りだ?」
『国道15号線を南下中で品川駅手前です』
「了解。首都高使って南下するから、15号からそれたらすぐに知らせてくれ」
『了解』
千葉は機転を利かせて、首都高速を使って先回りしようと考えたのだ。