CHECKMATE
『移動速度から言って車で移動中と思われます。携帯電話が繋がらないので、拉致されたのでしょうか?』
「恐らくな」
Bluetoothで倉賀野とやり取りをする。
昨夜、夏桜との会話をふと思い出していた。
『他に、隠してることは無いよな?』
『……………ん』
返答にかなりの間があった。
それが気になっていた千葉。
尋ねた所で素直に話すような夏桜でないことは重々承知している。
自身の身を危険に晒してでも、データを守り抜こうとしていることがあるだけに、千葉は不安で仕方なかった。
*
GPSの移動が停止したのは、本牧埠頭。
少し前に神保と偵察した倉庫があるところだ。
「倉賀野、埠頭のどの辺りか詳しく調べられるか?」
『今やってます』
辺りに怪しい車や人影が無いか注意しながら探していると。
『今、班長の携帯にデータ繋ぎました』
「サンキュ」
千葉は携帯に送られて来た位置情報を確認する。
すると、50メートルほど先の場所でGPSが止まっているのが確認できた。
「一応、現状をメンバーに伝えてくれ」
『了解「待って!」』
「どうした」
『あの、……その』
「何だ、はっきり言え」
真希はすぐさま手帳を取り出し、メモを始めた。
そこには、千葉の携帯もハッキングされている恐れがあると。
それを見た倉賀野は状況を把握し、メモに何やら書き始めた。
そして、別のパソコンでカタカタと物凄い速さで入力し始めると。
「ッ?!………了解」
千葉が乗っている車のナビ画面にデータを送り込んだ倉賀野。
携帯が駄目ならせめてナビにでもと思ったのだ。
ナビのモニターには、『スパイが携帯をハッキングしてるから、こちらで対応する』と。