CHECKMATE
あの男は確か、密売ブローカーの仙道。その後ろにいた鋭い視線を向けてた男に見覚えがある。
夏桜は記憶を辿った。
「あ、闇の組織の人だ」
アメリカの研究所の地下室で何度も見た記憶がある。
いつも指示出す、主犯格的記憶だ。
尾島組と闇の組織が繋がっているのでは?と思っていたが、それが確証を得た形となった。
『VP-Ⅲ』を使って、土台となる『W‐D』を使ったとしても、元の状態の良い原料が必要である。
だから、どうやって『VP‐Ⅲ』を使うつもりなのか気にはなっていた。
それが、あの婦人科で密売されている卵子や受精卵といったものを使うとなると、完全体を作り出しかねない。
自分でした事だけれど、人類滅亡の危機にあるのでは?と急激に不安に駆られる。
作り出す前に死んでいればよかったと後悔の念に駆られるが、もはや手遅れ。
自分一人の力ではどうすることも出来ず。
倉庫の中にある小部屋の床下に取り残された夏桜。
足下に冷気が流れ込んで来る。
数分前に水をかけられたことで、急激に体温が奪われて行く。
はぁと息を吐くと白い息になることから、閉じ込められたのは冷凍庫のようだ。
辺りを見回してもここがどこなのか分からない。
お気に入りのトートバッグも見当たらない。
千葉が付けてくれたGPSは足元のパンプスに仕掛けられたものだけ。
発信機が壊れていない事を祈るしか夏桜には出来なかった。