CHECKMATE
千葉が倉庫の窓枠に手を掛けると、浮いた脚の足底を押し上げる剣持。
阿吽の呼吸のように、千葉がすることを無言でフォローする。
千葉は近くの倉庫の荷積みでフォークリフトを稼働させる音に紛れ、倉庫内の男らに気付かれないように窓から中に入る。
駆け寄るや否やジャンプした勢いで壁を一蹴り、その反動で1人の男の頸部に回し蹴りを見舞う。
着地したと同時にしゃがみ込み、床に手を突き、長い脚で1人の男を足払いした。
千葉の存在に気付いた残りの男が千葉に向かってナイフを振りかざして来た。
それをかわし、男の肘部分を上から振り落とした腕で払い除け、その反動で体を回転させて男の顎を肘で見舞った。
完全に気絶してない男に蹴りと手拳を食らわし、フゥ~と息を吐く。
「見張りは処理した」
『了解』
剣持に無線で合図し、男の衣服の中から鍵を探し出した。
それを手にして小部屋へと駆け寄り、鍵を開けた。
けれど、部屋の中にはどこにも夏桜の姿はない。
位置情報を確認しても、倉庫内から移動してない事を確認して、倉庫内を探す。
しかし、どこにも靴らしきものは見当たらない。
今一度小部屋の中を隈なく確認した、その時。
何てことない小部屋なのに、モーター音が耳につき、違和感を覚えた。
部屋の外部を見回してもどこにもモーターが使われるようなものはない。
「どういうことだ?」
『どうかしたんですか?』
「夏桜の靴がないのに位置情報は移動してなくて、モーター音はするのにそれが何に使われているのか分からない」
『画像下さい』
「待ってろ」
倉賀野に画像を送るために、小部屋の様子を動画と写真で幾つも撮影し送ると。