CHECKMATE
「組織の壊滅までは、もう少し時間がかかりそうだが、気になる点があるんだが……」
「……何?」
千葉が眉間にしわを寄せて夏桜を見据えた。
「夏桜が開発したIP細胞のデータが例えあったとしても、何故奴らは腕づくで取り上げようとしないんだ?」
「それは……」
冷凍庫に閉じ込めて監禁したり、脅しもした。
けれど、本当に吐かせたいのであれば、薬で脅したり、それこそ拷問のように暴力で危害を加えて無理やり吐かせることも可能だろうに。
「一輝には話してない事があるから」
「はっ?どういうことだ?」
「実は…――…」
夏桜は千葉に本当のことを明かした。
本当であれば、話したくない事実。
話したことで事実を知ってしまえば、いつか千葉の命が襲われてしまうかもしれないと思っていたからだ。
けれど、闇組織の主犯格であるエダーが逮捕され、直に組織が壊滅するならば、事実を話しても問題ないと思ったのだ。
「じゃあ、何か?その『VP‐Ⅲ』というのと『W‐D』というのを使い、更には正常な受精卵から完全体であるヴァンパイアのようなものを作り出すということか?」
「……うん」
「………」
さすがに想像の域を超えていた。
人類滅亡に繋がってしまうかもしれないほどの、重要なデータだという事を改めて実感した。
「夏桜」
「……ん?」
「そのデータはどこにある」
「………」
「俺が処分してやるから、俺に渡せ」
「………」
処分すると言っても簡単に出来ないことくらい夏桜にだって分かってる。
千葉が自身の地位も命も懸けてかけてくれた言葉だという事も。