CHECKMATE
「話して無かったな」
「……ん?」
「前にお前が言っただろ。俺が御曹司か何かか?って」
「……あ、うん」
「御曹司ではないが、金に困ったことはないと話したよな?」
「……えぇ」
夏桜が重大な秘密を共有したように、千葉もまた自身の秘密を口にすることにしたのだ。
「俺、警視総監の一人息子だ」
「………え?」
「バレないように苗字を母方の旧姓に変えてある。コネで入ったと思われたくないから、現場で第一線を張って来たけど」
「……そう……なんだ」
「だから、父親に話して、データを処分したいと伝えるから」
「………」
「だから、俺に渡してくれ」
「………」
データが夏桜の元にあるうちは安心出来ない。
それこそ、データが無くなっても、組織が壊滅しない事には安心出来そうにないが。
それでも、一つでも不安材料を取り除きたかった。
「頼む。……俺を信じてくれないか?」
千葉の瞳は嘘を吐いていない。
元々夏桜に対しては、最初から誠意を常に見せている。
だからこそ、夏桜は躊躇する。
処分するという大役を彼に丸投げしていいものか。
「じゃあ、処分するかは一先ず置いておくとして、……どこにある?」
「………」
「夏桜を困らせたいわけじゃない。お前の抱えてるものを俺にも背負わせてくれないか?」
「っ……」
「頼りないかもしれないけれど、俺は本気だ」
真剣で熱い瞳が真っすぐ夏桜の瞳を射抜く。
「……ここ、……にある」
「ここッ?!どこだ」
夏桜は必死に懇願する千葉に押し切られたような形で、彼を信用することにした。
元々、彼を疑ったことなど一度もない。
常に自分に対して最善な方法を取ってくれていたからだ。
「ここ………に埋め込んである」
「はぁっ?!」
夏桜は、自身の胸に人差し指を当てた。