CHECKMATE

「特殊加工してあって、画像に映らないようにしてある」
「何でそんなことを……」
「手に持って逃げ出せるような状況じゃ無かったから」
「だからって……」

体内にチップ状態のものを埋め込むのはここ数年各国で取り入れられているが。
女性という体で、大事な部分であろう胸に埋め込むとは……。

「すぐに渡せない事は分かった」
「……ごめんなさい」
「夏桜が謝ること無いだろ」

自ら試験材料にでもなったかのように薬を煽ったり。
重要なデータが入ったチップを自らの体内に埋め込まなければならないほど、追い詰められていたという現実。

千葉は、申し訳なさで俯く夏桜をぎゅっと抱き締めた。

「もう自分を犠牲にするな」

誰にぶつけていいのか分からない怒りと。
彼女が背負って来た重すぎる過去と。
それでも自分を庇おうとした彼女の気持ちに応える術が見当たらず遣る瀬無さ。

腕の中の夏桜はそこら辺にいる女性よりも華奢なのに。
誰よりも強く生きて来た。

それが千葉の心を強く刺激する。

初めて味わう感情。
誰にも傷つけさせないと思わせるほどの高ぶった感情と。
誰よりも俺自身に頼って欲しいと思う願望のような思い。

これを言葉にするなら……恋?なのだろうか?

今までも助けたいと思う感情は常に抱いていた。
第一線で活躍し、検挙率No.1と言われるだけあって、重大事件を多く検挙して来た。

それでも、夏桜に抱く感情と同じになった事は一度もない。
だからこそ、この感情が何なのか、確かめる方法が……。

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