CHECKMATE
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「では、本人の許可が得られるなら、処分するという事で宜しいのですね?」
「あぁ、それが最善だろう」
総監室(警視総監)で父親である犬飼 仁昭に夏桜のデータに関して指示を仰いでいた。
久しぶりに見る息子に目尻を下げる仁昭は、報告書を受け取り、踵を返す息子に声をかける。
「お前にしては珍しいな」
「……何がですか?」
「例え被害者であっても、深入りしない性格だろ」
「………そうですね」
「彼女の事が好きなのか?」
「………」
「別に反対するつもりは無い。もう子供じゃないんだから、お前の意思を尊重する」
「……かもしれません」
「フフッ、そうか」
「とはいえ、一方通行だと思いますけど」
「だとしても、母さんが聞いたら喜びそうだな」
「………」
一人息子を一人暮らしさせている仁昭は、密かに仕事に関して千葉の動向を探らせてはいたが、女性関係まではさすがに探りは入れていない。
どこかの令嬢との縁談を~などと、古臭い考えの持ち主でもなく。
息子がしたい事を黙って応援し続けて来た。
「では、失礼します」
「今度、彼女を家に連れて来なさい」
「……了承を貰えるか分かりませんよ」
「最善を尽くすんだな」
「フフッ」
ドアの手前で踵を返し、敬礼する。
そして、フッと表情を一瞬だけ緩め、総監室を後にした。
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「照さん、仙道は完落ちしました?」
「半落ちといったところか」
「それでも十分です。さすが照さんっ」
「明日も剣持とやり合って来る」
「フフッ、楽しみですね」
千葉と剣持が仙道を追っていたように、第四課でも長年仙道を追っていた。
定年間際の神保にとって、これが最後の大勝負のようだ。